『 もっと間 ( ま ) を大切にしたい 』
『 余韻を聴きたい、聴かせたい 』
そう感じた時
『 音数を減らそう 』
そんな想いに辿り着きました。
・・・と云うより、音色を美しく響かせることに集中すればするほど
自然と音数は減ってゆきました。
その時からです。
私とヴィンテージ・ギターとの付き合いが始まったのは。
ということで、本日の記事は久方振りに
『 マニアなアコギのお話 』
自らがそのスタイルを 『 グラム・フォーク 』 と称した
派手な出で立ちの加奈崎芳太郎さんと仲井戸麗市さん ( チャボ ) によるデュオ 『 古井戸 』
このお二人が弾いていたものと同じ 『 1970年代製ギブソン・ハミングバード 』 が
私にとっての初めてのヴィンテージ・ギターでした。
それはそれは素晴らしいギターで、コードを一発鳴らしただけで
『 鳥肌 』 が立ったことを今でもハッキリと憶えています。
1970年代ギブソンは、60年代ものと比べると全くの不人気ですが
音はブライトで、ずっとパワーがあります、
・・・なのに、何故かもうとっくに手元にはありません ( 涙 )
今でも時折このギターを見掛けると、昔ライヴで 唄った
『 飲んだくれジョニー 』 のフレーズが蘇ります。
昨日は、久し振りに朝から夕方まで集中してギターを弾きました。
私は、ライヴやレコーディング、それに伴う練習・リハーサルなど
シンガー・ソング・ライターとしての表現の中でもギターを弾きますが
それ以外の時でもギターを弾きます。
それは、完全なギター弾きとしての私。
故に、そこに肉声としての歌は存在しません。
古井戸と同じ 『 ギブソン・ハミングバード 』 ですが
こちらは 『 若き日のキース・リチャーズ 』 が弾く1960年代もの。
・・・本当は、初めにこっちを狙ってたのですが予算が足りずに断念 ( 涙 )
古井戸のものもキースのものも、やはりブルーズ・ロック系にハマります。
どちらもファンシーな見た目とは裏腹に、粗削りで泥臭い音がします。
『 ソロ・ギター ( ギター・ソロとは違います ) 』
というものを弾いています。
ソロ・ギターとは、一本のギターで
伴奏とメロディーを同時に弾く奏法のこと。
例えて云うならば、クラシック・ギターでの演奏を
アコースティック・ギターで行うようなもので
それ故に、難易度が高い。
されど、これが出来ればアコギのポテンシャルを
最大限に引き出すことが可能となります。
・・・私は、まだまだ未熟者ですが ( 汗 )
忌野清志郎さんが弾く 『 1960年代製ギブソン・J-200 』
清志郎さんのトレードマークと云えば、このJ-200ではなく
1950年製の 『 SJ-200 』 なのですが
生憎 画像が見つからず、こちらになりました。
聞くところによると、そのSJ-200は彼にとって特別大切なギターなので
もうこの頃は 『 家から持ち出し禁止 』 となっていたようです。
・・・20年位前、私もそのSJ-200を購入しそうになりましたが
借金地獄で路頭に迷うであろうことに寸でのところで気付き、事無きを得ました ( 汗 )
今では、ざっと当時の3倍の値段になっているようです。
最早、どう足掻いても無理ですね~。
『 8ビートをガツンガツンと刻ませたら、このギターに勝るもの無し!!』
ソロ・ギターを弾く場合、ピックは使用しません。
100%フィンガーピッキング ( 指弾き ) です。
非常に繊細なタッチを必要とするこの奏法は
美しく芳醇な響きと 『 余韻 』 が命。
『 余韻で語る、余韻を聴く 』 には
『 音数を減らす 』 ということが必須になります。
こちらは 『 若き日のニール・ヤングと1969年製マーティンD-45 』
当時、新品で購入しずっとメインギターとして弾き続けていたら
いつの間にかヴィンテージ・ギターになっていたという好例。
発売当時も買える値段ではなかった、ということですが
今となっては出物すらまず無く、あっても誰も買えないような超プレミアムなギター。
何しろ 『 キング・オブ・アコースティック・ギター 』 ですので
フラットピックでストロークをしても物凄いパワーですが
このギターこそ、ソリストがインストで弾いて頂きたい。
現代の音楽は、それがどのようなジャンルのものであれ
総じて音数が多いように感じます。
歌ものであれ、インストゥルメンタルであれ・・・
歌ものであれば、当然その歌詞に於ける言葉数も多い。
勿論、どちらが良い悪いの問題ではありませんが
私個人としては、それを余り美しいとは感じない。
こちらも、やはり若き日の 『 ジェイムス・テイラーと1967年製ギブソンJ-50 』
JTがこのJ-50を弾いていたのは、アルバム 『 スウィート・ベイビー・ジェイムス 』
『 マッド・スライド・スリム 』 あたりまでの数年間でしかないのですが
いまだにJTと云えば、このJ-50の印象が強烈です。
それ程までに彼の音楽、歌声と相性が抜群だったのですね。
そして、何よりこの人 『 兎に角アコギが上手い!!』
シンガー・ソング・ライターが弾くギターということでは
現在に於いても 『 ピカイチ 』 ではないでしょうか!!
またこの人、ただギターが上手いだけでなく 『 コード・センスが抜群に素晴らしい!!』
あの1970年当時、フォーク系シンガーやギタリストの誰もが
判で押したような原色一色のロー・コードばかりを弾いていた中で
突如、ジャズ系テンション・コードを織り交ぜながら
低音弦でベース音をどんどん変化させていく
彩鮮やかで革新的なコード・ワークを確立させた人なのです。
日本でも、そんな彼の音楽やギターに心底ノックアウトされた信望者が多数出現。
中でも、吉川忠英さん、佐橋佳幸さんなどのスタジオ系トップギタリストが
今も彼に憧れ、同年代のJ-50をトレードマークとして弾いています。
かくいう私も、同じく彼に憧れ同年代のJ-50を弾いていた時がありましたが
やはり、今はもう手元にはございません ( 涙 )
ジェイムス・テイラー、彼こそ 『 ギター1本で歌と音楽を表現する、その完成形 』 と云えます。
『 間で聴かせたい 』
『 余韻で語りたい 』
そんな風に感じ始めた約25~6年ほど前から
私は、現行品のギターからヴィンテージ・ギターに持ち替えました。
懐古主義ではありませんが
古いギターには、新しいギターでは決してクリアー出来ない領域が
確実に備わっているように感じるのです。
音に芯があること、音の線が太いこと
サステイン ( 音の伸び ) が長いこと
音に艶があること、倍音が芳醇であること等々・・・
云うなれば、現行品のギターとは真逆な個性を有した楽器なのです。
『 一音の存在感 』 が大きく深いため
自然と音数を必要としなくなってしまう。
反対の表現をするならば
近年製の楽器は、音数を多く鳴らすのに適した創りになっている。
注目すべきは、そんな近年製のギターの創りが
近年の音楽のトレンドと非常にシンクロしているということです。
最早、何の説明も要らないくらい有名な 『 若き日のジョン・レノンとギブソンJ-160E 』
こちらの画像を拝見するに、恐らくまだデビュー間もない頃のワンショットなのでしょう。
このギター、実はこの後 盗難に遇いジョンのもとから消えてしまいます。
しかしその後、 同時にこのギターを手に入れたジョージ・ハリスンから借りて
まるで自分のギターであるかのように弾き続けるのです。
・・・とはいえ、やはり気がひけたのでしょうか、そのギターはジョージのもとに返します。
しかし、彼はまたしてもこのJ-160Eを購入するのです。
その時のJ-160Eこそが、生涯彼の傍らに有り続けたJ-160E。
・・・もう、このギターに関しては当ブログにて山ほど蘊蓄を述べてきましたので
これ以上語ることが憚れますが、敢えて一言申し上げるなら
『 音も使いづらさも他に類を見ない激ヤバ・ギター 』
でもその分、弾いてて面白いけどね~!!
現在の弾き語りライヴに於ける私のメインギター。
もうずっと、ヴィンテージ・ギターを弾いていると申しましたが
それは、ソロ・ギターを弾く場合だけ。
シンガーとしてステージに立つ場合は
まず何より弾き易さ、そしてトラブル発生率の低さを最優先にするため
近年製のエレアコ ( エレクトリック・アコースティックギター)
を弾いています。
また、シンガーとして歌を唄う場合には
もうひとつ重要なポイントがあります。
それは、歌を邪魔しない楽器であること。
私が昔から愛用し続けている 『 ギブソン 』 は、真さにそんな楽器。
総じて音のレンジが狭く、いい意味でのチープな響きが持ち味なため
ブルースやロック、弾き語りをするのに適している。
かたや 『 マーティン 』 は、音のレンジが広く芳醇な響きがするため
ギター1本で世界を築くのに適している。
・・・そう、あのウィンダム・ヒル・レーベルの革命児
『 マイケル・ヘッジス 』 のように。
エレクトリック・ギター界 ( ロック・ギターに限る ) に革命を起こした人物が
ジミ・ヘンドリックスやエディー・ヴァン・ヘイレンだとしたら
アコースティック・ギター界に革命を起こした人物は間違いなくこの人 『 マイケル・ヘッジス 』 !!
兎に角、その全ての全てが革新的で
『 アコースティック・ギターの概念を全て塗り替えてしまった超天才 』
この人が居なかったら、恐らくあの押尾コータロー さんも現れてないんじゃないかなぁ?
・・・ただ、この方も ” ヒーロー短命の法則 ” から外れることなく
1997年、ツアー終了後の自宅へと向かう帰路にて自動車事故に遇い
この世を去ってしまいます。享年43歳。
ミュージシャンの夭折 ( 43歳という年齢からして、この表現は相応しくないかもしれないが) というと
古今東西、大概がオーバードース ( ドラッグの過剰摂取 ) が死因となっておりますが
彼に至っては、その痕跡は微塵もなく非常にストイックで温厚な人柄だったようです。
こちらの画像を見ても、ギターのヘッド部分から 『 煙 』 が出ていますが
これがエリック・クラプトンなら煙草、ヤバイ奴なら大麻となるところですが
彼の場合は 『 お香 』 です。
非常に 『 スピリチュアル 』 だった、彼らしい一面を覗かせています。
で、このマイケル・ヘッジスが生涯メインギターとして弾き続けたのが
この画像にも映っている 『 1971年製マーティンD-28 ( 1969年製という説もあり ) 』
40番台マーティンのD-41や45のような煌びやかで華やかな音はしませんが
音の太さ、サステイン、パワー感など、そのどれもが40番台マーティンに引けを取りません。
最早1969年以前のD-28、1970年代前半までのD-41,45が超高額となってしまった現在
一生物のヴィンテージ・マーティンを狙うなら、この1970年代製D-28でしょう。
現在では手に入らない良質な材料で、現在よりも遥かに時間を掛け
『 人の手 』 によって創られているため 『 非常に濃厚な音 』 がします。
ヴィンテージ・ギターというものは、世界各国を旅しています。
ある時は寒い国、またある時は暑い国。
空気の乾いた場所だったり、湿った場所だったり。
そして、そのギターを弾く人の個性だって千差万別です。
フラットピックを持って、弾くというよりは打楽器のように
叩くように弾き倒す人に使われていたり
またある時は、優しく優しく爪弾きながら
恋人のように、我が子のように慈しむ人のもとにあったり。
故に、私のもとにヴィンテージ・ギターがやって来た時は
『 この人 ( ギター ) は、ずっと永い間
いろんな場所で風雪に耐えてきたんだなぁ~ 』
と思うのです。
そして、今もそんな
『 風雪流れ旅の途中なんだなぁ~ 』
と思うのです。
若き日のオフコース 『 小田和正さんと鈴木康博さんが弾く 1972年製マーティンD-41 』
オフコースの始まりは2人だけで、尚且つお二人ともアコギを弾いて唄ってたのですね~。
今や、オフコースで小田さんがギターを弾いていたなんて、ご存じない方も多いことでしょう。
そういう意味でも非常に小さいですが、この画像は 『 激レア 』 かと思います。
ところで、この1970年代初期のマーティンD-41というギター
永年に於ける 『 私の憧れのギター 』 なのです。
今まで沢山のギターを弾いてきた、聴いてきたつもりですが
結局のところ、このお二人が弾く 『 オフコース初期のアルバムの音 』
それを超える響きには巡り合えておりません。
『 マーティンD-28という伝説 』 という本の中で、小田さんがこんなことを云っている件があります。
『 D-41は、とっても華やかな音だから こぢんまりまとまってはくれないんだよ 』 と。
また、鈴木さんも とあるインタビューの中で、こう語っています。
『 D-41は鳴り過ぎるから最近はステージでは使っていない 』
この 『 鳴り過ぎる 』 ということに関しては小田さんも
『 PLAYER The MARTIN D-45 and More 』 という写真集の中で同様のことを述べています。
これは何を意味するのかと云えば
『 歌唄いの伴奏として弾くには華やか過ぎて存在感が有り過ぎる音である 』
ということをだと思うのです。
つまりは、ソリストがインストで奏でるべく
『 ギター1本で世界観を築くに十分過ぎるオーラを湛えている 』 ということでしょう。
40番台のマーティンは 『 特有の倍音とリバーブ感 』 があり
10番、20番、30番台とは 『 明らかに違う音創り 』 をしています。
特に 『 ジャーマン・スプルース 』 という幻の材料を使った
1969~1974年前期までのD-41、45は
その他のマーティンとは一線を画した 『 とりわけ豊潤で華やかな音 』 がします。
そんな小田さん、鈴木さんと同じく1972年製のD-41を愛用しているアーティストには
やはり、スタジオ系トップギタリストの 『 小倉博和 』 さんが居られます。
彼は元々ギブソンユーザーとして有名な方だったのですが
この1972年製D-41に出合ったことで 『 メインギターがマーティン』 になってしまったとのこと。
彼が、このD-41でレコーディングした代表曲には
あの SMAP の名曲 『 世界に一つだけの花 』 があります。
その他、日本でこの同年代D-41を弾いている方には
『 世良公則 』 さん、お亡くなりになられましたが 『 忌野清志郎 』 さん
元プリンセス・プリンセスの 『 奥居香 』 さん等が居られます。
また海外では、AMERICA の 『 ジェリー・ベックリー 』 さん
お亡くなりになられましたが 『 ダン・フォーゲルバーグ 』 さん
かの 『 ジャクソン・ブラウン 』 さんもヴィンテージD-41を弾いております。
ジャクソン・ブラウンに至っては、筋金入りのヴィンテージ・ギブソン・ユーザーなので
如何に、このD-41を気に入っているかが覗えます。
今、私の手元にあるヴィンテージ・ギター
このギターは、生涯大切に大切に弾き込んでいくものですが
私がこの世を去った後は、また誰かのもとへ
或いは、また何処かの国へと旅立つことでしょう。
そして、もしそんな旅の途中で健康を害した時には
腕利きのリペアマンの方に修理をしてもらいながら元気を取り戻し
時を超え、国境を越えて弾き継がれて行くことでしょう。
・・・そう、私がこのギターを手にする前
手にしている現在と同じように。
ヴィンテージ・ギターには、そんな 『 ロマン 』 が宿っているのです。
※ この記事に於ける画像は、ほぼ全てお借りしたものです。
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